トータルフットボール 別館

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2006年2月5日(日) 中田英寿コラム 14
ボルトンの二人のセンターフォワード VSウィガン戦
怪我の影響から、ウイークエンドのポーツマス戦を欠場した中田が、ホームのウィガン戦でスタメン出場した。ボルトンは、デービス、ヤンナコプーロス、ジャンセンの3トップで、ノーラン、中田、ファティガの中盤でスタートした。

試合開始から、ボルトンは、得意のロングボール攻めで展開を優位に進める。とにかく、センターフォワードのデービスにボールを集めてそのこぼれを狙うという形でゴール前のシーンを数多く作る。中田は、序盤は、頭の上をボールが通過することが多くて、ボールに絡めない。

いい感じで試合を進めていた、ボルトンだがアクシデント発生。前半23分に中盤の底に入っていた、ファディガが怪我で退場、代わりに、ハントが入ったが、ハントはリズムに乗れずに、逆にウィガンのペースに移る。

中盤すぎになると、中田が攻撃に絡み始める。1本目のシュートは、こぼれ球をボレーシュートで狙うが、キーパー正面。さらに、スローインから、絶妙のボールコントロールを見せて、相手ディフェンダー頭上の浮き球でかわして、ゴールに突進すると、カバーに来たディフェンダーを交わしてシュートを放つも、ブロックされる。中田は上り調子で前半を終了した。

そして、後半。スタートからジャンセンに変えて、バステを投入。後半7分に、ボルトンはまたまたアクシデントで、センターフォワードのデービスが捻挫で交代して、メキシコ代表のボルゲッティを投入する。そして、この交代がこの試合の転機になった。

ストライカーというよりは、ターゲットマンとしてつぶれ役のデービスがいる時間帯は、ほとんど全ての攻撃がデービスの頭目掛けてロングボールが集められる。このボールに対して、デービスがトラップして、キープするなりして、中盤が上がれる時間を作れるのであれば、そういう攻撃でも問題ないが、デービスはとにかくつぶれるだけ。競り合いには強いので、ゴール前に放り込むと、なかなかの確率でチャンスを生み出すが、攻撃は単発に終わることが多い。一方の、ボルヘッティは、長身で、当然ヘディングも強いが、足元も柔軟なので、グラウンダーのボールを受けて、キープをして、中盤の選手が攻撃に参加するスペースと時間を生み出すことが出来る。(ストライカーとしての才能は段違いでボルヘッティが上)。

ボルヘッティが入ってから、ボルトンの攻撃は見違えてスムーズになっていく。中田、ヤンナコ、バステが絡んで展開するサッカーは、ここ最近のボルトンにはなかったゲーム展開だった。ボクは、監督の心理というのはよく分からないが、明らかに、デービスよりボルゲッティのほうが能力が優れていると思うが、アラダイスの考えは違うようだ。(デービスの存在は、ちょうど、日本代表で鈴木が入るとゲームが硬直しているように感じるのと同じ感覚をもつ。監督にしてみると、汗っかきタイプで、安定した仕事をする選手を起用したくなるものらしいが・・・。)

そろそろ点が入りそうな時間帯だなと思った後半15分、ボルトンはエヌゴティのハーフライン辺りからのロングフリーキックから、相手のクリアミスをついて、ヤンナコプーロスが先制のゴール。これで、完全にボルトンがペースをつかみ、中田は、精度の高いロングパスでチャンスを組み立てる。(ここ最近の、中田のロングパスの精度の高さと軌道の美しさは秀逸。)前半は、なかなか中田にボールが集まらなかったが、いいプレーを続けていくことで、チームメートの信頼を取り戻して、試合終盤には、近くの味方は、まず中田を探して攻撃を組み立てようとする展開になった。

試合は、ウィガンがフリーキックから、ヨハンソンが押し込んで同点で終了したが、ボルトンにとっては後半の内容は良かったので、アンラッキーだったが、次につながる試合だった。

ずっと言っているように、中田の調子はシーズン序盤から安定していい状態だと思う。フィオ時代は、明らかに調子が悪かったが、コンディションにはまったく不安はない。問題なのはロングボール多様のボルトンの戦術で、ボールが頭上を超えていく展開が長く続くと、いくら中田でもどうする事もできない。ちゃんと試合を見たうえで中田を批判をするのであればそれは人それぞれの見方があるので、まあ正当な行為だと思うけど、結果だけを見てもしくはハイライトだけを見て、選手を判断するのは非常に危険だと思う。

それなりに今のサッカー(=デービス中心のサッカー)でも、結果が出ているのでアラダイス監督は静観しているようだが、もうワンランク上のチームを目指すなら、ヤンナコ、中田、オコチャ(バステ)を中心にした、コンパクトなパスサッカーに切り替える必要があるのではないか?アラダイスの考えを変えていくには、中田が今日の試合の後半に見せた、プレーを続けていく必要があるし、手っ取り早く話を進めるなら、ゴール or アシストがほしいところだ。

とにかく、この試合は、トップの選手が一人代わるだけで、こんなにもサッカーが変わるんだということを示した、面白い試合だった。