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2006年1月29日(日) 中田英寿コラム 13
成熟したプロが見せた新たな一面 VSアーセナル戦
伝統のFAカップ4回戦。前の試合では出場停止だった中田だが、この試合は、先発出場。カンポ、ノーラン、中田の中盤。一方のアーセナルは、アンリ、ピレス、ベルカンプらは温存で、若手中心のメンバー。

FAカップといえども、普段のリーグ戦とは勝手が違うか、前半は、両チームともいまひとつの出来。ボルトンは、デービスとボルヘッティのターゲットタイプの二人を並べて、ヤンナコプーロスと3トップを形成するが、デービスとボルヘッティの役割分担が明確でなく、かぶるシーンが目立つ。アーセナルは、攻撃に厚みがなく、シュートシーンはほとんどなかった。

後半は、アーセナルの前線からのプレスが利きはじめて、主導権を奪う。若いレジェスとファン・ペルシーの2トップに、リュングベリが絡むといい形になりかけて、セットプレーとカウンターから、チャンスをつかみかける。

中田は、この試合は、はじめは前目の中盤でプレーしていたが、後半途中にカンポが怪我で退場すると、中盤の底に下がった。カウンターケアのために、前線に上がることはできなくなったが、ボールには多く触れるようになり、次第にリズムに乗っていく。

後半の半ばからは、両チームとも、得点のにおいが漂い始める。そんな中、先制点は、ボルトンのヤンナコプーロス。左サイドのガードナーからのアーリークロスをダイビングヘッドで叩き込んだ。試合は、そのまま、1対0で終了した。

全体的な印象としては、後半はアーセナルにもチャンスがめぐってきていて、どちらが勝ってもおかしくなかった。ただし、メンバーを見ても、ボルトンのほうが本気度が高かったので、そういったモチベーションの差が出たのかなと思う。

さて、中田の印象だが、試合を通しては、まずまずよかったと思う。後半、バス・テに出した決定的なパスなど、鋭いパスも多く、凡ミスも少なかった。ボクは、もともと、今シーズンの中田のパフォーマンスに関しては、ずっと高いレベルで安定していると思っているので、この試合も、これまでの試合と同程度のいいパフォーマンスは見せてくれたと思う。

巷では、しばしは中田はプレミアに順応出来ていないのではないか、というような報道がされているので、心配しているファンもいると思うが、そういった心配は無用だと言いたい。現時点で、プレミアのスピードに完全にはフィットしているわけではないが、もともと、セリエで十分な実績を残した選手だし、スタミナやフィジカルの強さには定評のあるプレーヤーである。もう少し時間が立って、慣れてくれば、もっと分かりやすい活躍をし始めると思う。

ボクは、最近の中田を見ていると、次の2つのことを思う。1つ目は、「中田は本当にロングパスがうまくなったな」ということ。以前は、キラーパスと呼ばれた、速くて、鋭いグラウンダーのパスが持ち味であったが、ボローニャに移籍した辺りから、精度の高いロングパスを操るようになった。そして、2つ目は、「中田は本当にディフェンスがうまくなったな」ということ。昔から、当たりに強くて、ディフェンスもこなせる選手だったが、この試合の後半途中から中盤の底(実質ワンボランチ)を努めたことからも分かるように、献身的な働きも難なくこなせるようになってきているし、プレーヤーとしての幅が広がってきているな、と思う。

ペルージャ時代のように、血の気盛んで、突進力と得点力を兼ね備えて、ゴールに直接絡む働きを見せるアタッカーとしてのヒデも魅力的だったが、現在のクレバーで成熟したサッカープレーヤーとなってチームを操る、そんなヒデも十分に魅力的だと思う。